[dropcap]越[/dropcap]境ECをこれから始めようというモノづくり企業さんも多いと思います。そんな時に否が応でも考えなくてはいけないことが輸送手段になります。慣れない中でいざ調べてみると様々な貿易にまつわる単語に出会います。
乙仲?フォワーダー?EMS?クーリエ?FOB?インコタームズ?通関業者?等々、構造化されていない情報で頭がいっぱいになり、またどのように業者を選べばよいかもわからない、結局なかなか前に進まないという状況に陥ってしまいます。今回は、越境ECを始めるにあたり、輸送手段をどのようにして決めればよいかという視点をご紹介します。
何をどれくらい輸送する想定ですか?
まず初めに当然のことではありますが、商材やボリュームによって輸送手段は異なります。在来船を使用するような大規模なものから、国際郵便で済むような小口のものまで、また温度管理が必要なら例えばリーファーコンテナであったり、小口で鮮度重視のモノなら国際クール宅配便であったりと貿易実務における輸送手段は多岐に渡ります。
とはいえ、今回の前提は越境ECであり、基本的に小口の物量になります。そのため、多くは国際郵便や国際宅配便で事足ります。ここでざっくりと輸送手段とその概要を整理してみましょう。
尚、今回はイメージし易いように、例えばダイソーで販売されているような温度管理不要のコモディティ物品(文房具等)を現地消費者のご自宅まで届けることをイメージして考えていきましょう。その前提に立つと選択肢は概ね2つに絞られます。
パターン①:国際郵便で対応?
輸出における国際郵便とは、ざっくり言ってしまえば、国内から海外に郵便物を送ること、郵便の海外向け版ですね。通常郵便、小包郵便、国際スピード郵便に区分され、輸送形態としては航空便、SAL便、船便に対応しております。
越境ECにおいては、EMSという言葉をよく耳にすると思いますが、EMSが先述の国際スピード郵便を指します。
さて、例えば自分の商品を国際郵便で輸出しようと思った際に、通常郵便、小包郵便、国際スピード郵便の違いや航空便の船便の違い、そして前者の郵便区分と後者の便の区分関係等、読んでてもいまいちよくわからないという方もいると思います。そこでこれだけを先ずは押さえておけば良いでしょうという考え方を下記します。
- 基本はEMSでOK
基本はEMSを第一に考える。理由は、越境ECという特性とネット通販の関係を理解することです。越境ECでは、国内輸送と異なり比較にならない程地理的な距離に差がある。
また、通関という工程がワンクッション間に入る。その結果、基本的に納期は長くなるといういう慢性的課題です。次に紐付く話にはなりますが、多くの人は早くモノを欲しがります。
数日なら待てても出荷の手配から実際の出荷までに、自宅に到着するまでに10日かかるといわれたら当然に前者の方がいいですし、納期が短いところにスイッチする人も少なくないでしょう。
そう考えた場合に、越境ECはネット通販であり、かつ国境を越えた遠い場所にもっていくわけですから顧客満足度の観点からもEMSが無難となります。
また、しばしば勘違いされている点として、EMSは、他の航空便、SAL便、船便と比較して、必ずしもこの中で常に一番価格が高いとは限らないのです。実際に郵便局の価格表を確認して頂ければ分かりますが、軽量の物であれば条件によってはEMSの方が安かったりします。そのため、物量が少ない最初は得てしてEMSで十分といったケースが多いです。
もちろんボリュームによって異なるケースもあるので、他の便と比較はしまましょう。但し、入り方として通常郵便、小包郵便、国際スピード郵便の区分で考えるよりも、輸送形態から入っていくとあまり悩まずに決めることができます。航空便、SAL便、船便、そして航空便の中で一番配達が最優先されるEMS、こう考えた場合に、ビジネス的にも多くはEMSがベターというケースが多いのです。先ずはその構造を理解しましょう。
パターン②:国際宅配便で対応?
いわゆるクーリエと呼ばれる国際宅配便です。国内でいうヤマトや佐川のグローバル版と認識しておけば十分です。ちなみにヤマトも佐川もグローバル展開はしているため、国際宅配便サービスにも対応しております。但し、やはり国際宅配便といえばFedex、DHL、UPSが主要なグローバルプレーヤーになります。それでは何が国際郵便と異なるかというと、スピードと料金です。主要プレーヤーの国際宅配便は条件によっては最短1日の翌日到着もあり、このスピード感はEMSとはいえ追随できない領域です。そして、それゆえに料金が高いということです。
基本的に越境ECを始めたばかりの頃は物量が少ないため、国際宅配便の料金を見たら「高っ!」となってブラウザを閉じると思います。お客さんが金銭度外視で超短納期で欲しいとか、こちらの物量が増えてきてEMSの制限を超えてしまった場合等に、国際宅配便業者と特約を結んでボリュームディスカウントを狙うといったアプローチとして有効ではないでしょうか。
以上から、私たちの推奨する越境ECの最初の取っ掛かりとしては国際郵便、その中でもEMSが越境ECの特性から適しているのではないかと思います。少しでも皆さんの残業時間が減れば幸いです。