海外営業って大変なの?

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気になる人の多い海外営業という仕事

海外営業担当あるいは海外営業責任者になった、もしくは海外事業責任者になった、はたまた海外営業に興味があって転職したい、イメージゆえに営業は極力やりたくないという人は多いですが、それが海外営業になるとちょっとやってみたい、ちょっとした憧れを感じてしまう、そんな声を時折聞きます。今回は、そんな海外営業に関して読めば一通り分かるように纏めました。

海外営業は何するの?

まず、「そもそも海外営業は何をするのか?」ですが、これは、各会社の定義によってその役割はマーケティング領域まで踏み込んだり、クロージングだけ等、人的資源や予算、会社の海外販路開拓の重要度・優先順位によって、担当者の業務テリトリーは大きく変動します。

先ずは昨今の営業を取り巻く環境をざっくり把握しないと見えてくるものも見えてきません。そもそも営業の目的自体は国内営業と変わらず、顧客との商談をクローズさせることであり、普遍です。

但し、昨今のインバウンドマーケティングやインサイドセールスの一定程度の浸透もあり、マーケティング・セールスの戦略によって組織ごとにマーケティングと営業のオペレーションや業務分担が変わってきます。一例をあげてみましょう。

大きい組織になってくると、リードを獲得する主にインバウンドマーケティングを軸としたマーケティング部署・担当者がいます。リードを顧客すると、今度はインサイドセールス部門がそのリードを引き受け、電話やメール等でリードを温めていきます。そして、リードが見事ホットになったタイミングで対面営業する営業担当者が出てきて、実際に商談しクロージングする。そのような見込み客が顧客化するまでのフローで担当部署が役割をこなしながら購入の期待値が徐々に上昇・変化する見込み客を渡していくのです。

そのようなシステマティックなパターンもあれば、従来型のパターンもいまだ健在です。すなわち、中小・中堅企業の多くの場合は、マーケティング部がなく、営業部署が展示会出展も含めて部署内で行い、また個別企業にテレアポして訪問、あるいは飛込訪問するというTHE営業スタイルが根強いわけです。

そして海外になると、海外事業部が全部まとめて行ったり、従来の国内の営業部がそのまま海外も担当する等、部署単位での役割分担がすこし曖昧になったり兼務の状態で始まるケースが少なくありません(経営者からすると、海外市場は大きいし重要とは思うけれど、あたるか分からない事業に思いきってリソース投下するには勇気がいるため、まずは兼任でという流れはやはり多いですよね)。その結果、一部の大企業を除いて「海外営業」がどうなるかというと、多くの企業でよくみられるパターンは、展示会の出展から後日の個別の商談のためのアポどり、実際の商談まで、一つの組織、特に会社自体が海外販路開拓が初めての場合には、組織どころか一人あるいは数人程度担当させられているケースが大半といえます。結論として、「海外営業何するの?」と言われたら、乱暴に言えば「マーケも営業も全部だよ」となるわけです。ブラック企業の社長は「自分を成長させるためにはとてもいい機会だろ」発破をかけるわけです。

ちなみに最近ではMA(マーケティング・オートメーション)といって、見込み客をホットな状態にするための各種実務オペレーションを自動化するツールも出てきており、またSFA(セールスフォース・オートメーション)といってSalesforceに代表されるような営業の効率的な業務オペレーションに寄与する一元管理型(実際はオートメーションという感じはなく、Salesforceの場合は別のMAサービスと組み合わせてマーケティング・営業を一元自動化する提案に近い)のツールも出てきており、マーケティング、特に営業領域にもIT化はかなり浸透してきていますね。

海外営業の具体的な内容

次に全部やらされる前提で海外営業の具体的な内容を確認していきましょう。

海外現地の市場調査・マーケティング戦略立案

「海外営業」なのにマーケティング戦略やるの?と疑問を持つかもしれませんが、「とりあえず売れるか試してみよう」程度で、殆ど戦略らしい戦略もない状態で担当を決めてトライアルさせるケースは中小企業ではかなり多いです。

また、大企業でも抽象度が極めて高い方針程度の戦略も結構ざらです。そのため、営業を成功させようと思った時には、その前工程のマーケティング(現地に合わせたターゲットセグメントや当該セグメントにぶつける商材、その価格レンジ、また現地での販路開拓方法、商流・物流等)は明確になっている必要があり、そのマーケティング戦略の度合いとなる事業(小規模なら企業)の戦略に合致している必要があります。

仮にマーケティング戦略まで経営層や別の部署が用意してくれたとしても、あくまで取っ掛かりとしての軸にはなるけれどPDCAで修正していくことになるので、結果的に事業戦略も自分の中で考えておくことは重要ですし、営業戦略考える上で、どのセグメントに重点的に売るのかを自分の中であたりを付けることは重要です。なので少なくとも自分の中で海外現地の市場調査・事業戦略立案はしておきましょう。

現地展示会出展

効率的に商談数を増やそうと思ったら展示会はやはり有効です。言語の問題を考えれば、メール送ったり、特に電話する等の状況を個別に都度することを想定すれば、展示会の場合は基本は興味があって来場する層であり、また向こうから興味があれば来てくれるので、楽と言えば楽ですよね。

但し、現地展示会の申し込みから出店準備も国内と比べたら大変ですよね。特に実物を展示するようなケースでそれなりのサイズがある場合は、ハンドキャリーもできないので、輸出手配する必要があります。国内では輸送会社にワンコールでしたが、輸出となると、通常はインボイスやパッキングリストが必要になります。関税がかけられないように段取りもしたいですよね。そう考えると、新しい知識が必要になります。

中小企業で簡単にやる方法かつコストを抑える方法としてはJETROのジャパンパビリオンを利用することをお勧めします。展示会に単独で出ると、最初はゼロスタートなので、こちらからよっぽどの働きかけをしない限り、基本ブースに来てくれる企業は少ないですよね。

それがジャパンパビリオンになると、日本のブースエリアとして認知され、かつJETROが現地での種まきをしてくれるので、それなりに人が集まりますし、メディアも来たりすることがあります。このあたりの集客面を考えてもそうですし、先述の物流の手配もジェトロを窓口にして業者がサポート対応してくれるので、初めての展示会出展にはお勧めです。

顧客リストの作成

これは国内も同じですが、現地の展示会に出展して名刺交換したら顧客リストに入れる、あるいは個社別にアポ取り等して、名刺交換したら顧客リストに入れる、まだ合っていなくてもネットで調べて業界のターゲット顧客群に入ると思えば、サイトから連絡先情報を顧客リストに反映させる。このあたりは日本でやっていたことを英語でネット等で調べたりする必要があります。

海外向け商談資料の作成

無事商談にたどり着いたら日本語の国内パンフレットで商談するわけにはいかないですよね。もちろん英語や現地語にする必要があるのですが、単に翻訳するだけでは不十分なケースが多いので気をつけましょう。国内の資料が商品の説明に終始したものだと、特に海外ではその価値が伝わりにくいです。

特に機械系の製造業で新興国の展示会に出る場合は、現地ではまだ見慣れない製品、その製品のニーズや解決する課題に自体に気が付かない場合、日本で同じようなストーリー展開をしていても効果は見込めません。現地にとって新規性が高い製品こそ練り直りが必要です。他にも日本では特に製造業の場合。ベネフィット視点で語るケースが未だ少ないため、国内ではそれが当たり前だっとしても(=相手に考えさせるという、ある種の機会損失の温床)、海外は何かとコストがかかるので、展示会や商談の一回一回を無駄にしないためにも、ベネフィットファーストで定量化することは重要です。

他にも沢山課題はありますので、商談資料と後述のウェブサイトは価値を訴求する上でとても重要な役割を果たすので念入りに作成しましょう。一番避けたいのは、熱弁したけど、通訳がしっかり理解できておらず、伝わっていないパターンです。通訳は御社の社員でも業界の人間でもないので、そこは責めることはできません。そのためのリスクヘッジとして、必ず紙媒体とウェブ媒体は現地仕様にアップデートしておきましょう。商談の感触はいいけど、なぜか成約に至らないというケースはここに問題があるケースが多いです。

英文契約書の作成

商談でもちろん忘れていけないのが、英文契約書です。ここは初めての海外営業となると、覚えなくてはいけないことだらけですが、ここを分かっていないと後々トラブルになりかねないですし、ないより「出来る」海外営業担当者になるうえで、Inspection? Increased cost? になっていたらちょっと頼りないですよね。

最悪なケースは、出荷前にちゃんと検品して良品を輸出したのに、現地顧客が壊れてたから金返せあるいは返品するといわれた場合。あなたならどうしますか?場合によっては、相手が現地で裁判するとなったら?あなたならどうしますか?大企業で法務部やリスクマネジメント部がやってくれれば、契約書自体もそもそもリスクヘッジされていると思うので大丈夫ですが、そんな部署うちにはないよという中小企業の場合は、最悪のシナリオを想定して営業がきちんと理解しておきたいですよね。

そして忘れていけないのが貿易条件です。プライシングにもかかわってきますね。FOBなのかCIFなのか等、提示する価格とリスクの線引きをセットで示す貿易条件知らずして商談はできません。

ざっくり言えば、日本の工場渡しにするのか、日本の港までの価格か、海上運賃含めて価格なのか、保険まで入れた価格か、関税まで含めた価格なのか等、相手が意思決定しやすいようにいくつかのパターンを数量のロット単位で提示できるといいですね。

そのためにも先ずは貿易条件や、容積や体積単位での輸送コストの計算ロジック等はしっかり頭に叩き込んでおく必要があります。

海外向けウェブサイト・多言語サイトのアップデート

海外営業担当者が作りこむことはありませんし、またマーケティング部署があり、そちらが管轄していればいいですが、その場合でも注意が必要です。現地の商談で相手の意見や現地ニーズ等を蓄積して、それらをコンテンツに反映していくことが重要です。

こちらも日本語の商談支流と同じロジックで、基本そのままのコンテンツの翻訳は不十分なケースが多いです。特に製造業で10年前に制作したままのサイト等は会社案内のようなサイトであり製品のベネフィットを訴求するに至らないケースが殆どです。

今は機械系の製造業等でもブランディング視点が取り込まれている時代です。しっかりと伝わるサイトを製作できると、24時間365日引き合いを獲得してくれる集客装置になります。特に、リソースの限られた中小企業にとって、海外向けウェブサイトや多言語サイトは、とても相性がいいです。

是非効果的に作りこめるように海外営業担当者もコンテンツ面からサポートしましょう。基本的にマーケターよりも顧客に近いのは海外営業している担当者です。そこを忘れないようにしましょう。

アフターサポート

海外営業になると、現地のディストリビューターを活用して販路開拓するケースも少なくありません。最終のエンドユーザーのアフターサポートを、ディストリビューターの管理含めてどうするかも海外営業がきちんとハンドリングする必要があります。

よくあるのは、故障した場合にどうなるのか、定期的なメンテが必要な場合にディストリビューターがやるのか、自社がやるのか、輸出後の貿易トラブル対応等、実はアフターサポートがネックとなり商談に至らないケースは少なりません。このあたりもきちんとアフターサポートの自社にとってのベストな設計と運用を海外営業担当者がバシッとオーガナイズしましょう。

海外営業は要するに大変なのか?

以上ざっとポイントだけつらつらと書いてきましたが、このあたりは海外営業担当になったら少なくとも押さえておきたいポイントであり、大企業でない限りは殆ど自分でやらなくてはいけない業務になります。ポジティブに考えれば成長の起爆剤、ネガティブに考えればババ引いたわ!となるかもしれないですね。

個人的には20代は大ラッキー、30代でもラッキーだと思います。40代以降だとさすがにしんどいの方が強いかもしれないですね。さて、なにがともあれ海外営業が決まったら世界をまたにかけて頑張ってください!

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