キャリアを考える際、様々な視点があると視野が広がり、選択肢も比例して増えます。今回は柔軟に視点を持つという意味でイギリスの諺をご紹介します。
“You can lead a horse to water but you can’t make him drink”
「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」
場所を用意しても最終的に水を飲むか飲まないかは馬次第。「コントロールできる/できない」の視点に通ずる考え方でもあり、また結局のところ意思決定するのは本人なので何事も本人次第という含蓄のある言葉です。色々な局面で参考になる考え方だと思います。企業が提供する研修を例に考えてみましょう。
人材育成の視点
大企業を中心に会社が個々人のスキルを上げるために様々な研修を用意しています。最近では「リスキリング」の浸透がが拍車をかけています。一方で参加する当事者である社員は、日々の実務に追われている中で研修に参加しているため、研修中に仕事をしている人も割と多いのではないでしょうか。あるいは最近ではオンライン研修もかなり浸透していますが、リモートのため研修を受け「ながら」作業している人も少なくないのではと思います。例えばこの状況で当てはめて考えてみましょう。
提供側(人事部等)の視点
研修を提供しても受講者である社員がしっかりと受講していない場合、お金の無駄でしかありません。しかし、とは言え社員も納期に迫られている案件と受講日が重なっているケースも決して少なくないかと思います。この状況は、まさに「場は提供したけど真面目に受けるか受けないかは本人次第」です。ここでは水が飲みたくなるように目的や意義や効果等をしっかり事前に説明、共有することで真面目に取り組む割合を増やす施策を打つことに繋がるかもしれません。あるいは「一人当たり業務量が多すぎるのではないか?」との仮説から現状の業務量の分析に繋がるかもしれません。いずれにしても、このような視点を持つことで、具体的なアクションに繋がる点に意義があると言えます。
本人の視点
本人の視点ではどうでしょうか。より明確ですね。この機会を自分のスキルアップに繋げるのか、目の前の仕事を優先するか、長期的な視点に立つか短期的な視点に立つかでその後のアウトプット(パフォーマンス)も大きく異なります。この諺を胸に自分の人生を振り返ってみると、自分は色々なよい機会に恵まれていたけれど、実は「美味しそうじゃない」、「忙しいから今は飲まなくてもいいや」と選り好みや言い訳をしていたことに気付くかもしれません。自分磨きを疎かにしていたと改めて再認識することで、日々の学びの機会に対して時間を有効に活用し、今まで以上の成長スピードが期待できるかもしれません。
それは本当に望ましい水辺?
但し、気を付けるべき点もあります。提供側の視点では、そもそも前提となる「連れていく水辺」が独りよがりな押し付けになっていないかは注意が必要です。例えば、日本の職場で外国籍の方が働いてる場合に、日本の職場に働いているから郷に従えと異文化や多様性を無視し、昭和のスポ根気質な行動指針をOJTする場合等。いかがでしょうか?昭和から令和になり、そのようなことはかなり消滅したかと思いますが、答えは火を見るよりも明らかですね。
また、このような状況において、本人側の視点においても「連れていかれた水辺」を盲目的に正しい水辺と捉えることもリスクがあります。自分の物差しを絶対と捉えないことは勿論ですが、一定程度の自分の物差しはもっておくバランス感は日々意識しておきたい点といえます。
終わりに
仕事だけでなくプライベートにおいても当てはまります。自分が連れて行く側であれば、子育てにも通じますし、兄弟/姉妹や知人に対して通ずることもあるでしょう。また連れて行かれる側であれば機会を有効活用すべく、自分への戒めとしても機能すると思います。オンオフともに頭の片隅においてQOLを高めていきましょう。