世界で活躍するグローバル人材とは?求められる理由【令和版】

遥か昔から耳にする言葉「グローバル人材」。色々な人にイメージを聞いてみると「仕事で海外の人達と英語でバリバリ打ち合わせしている」や「世界で活躍している」「世界を飛び回っている」、「現地駐在して現地の生産工場をマネジメントしている」、「海外のITエンジニアとリモートでSlackやGitHubを使い英語で仕事を淡々と進めている」等々、実に様々なイメージがあります。

そんなグローバル人材を取り巻く環境は令和の時代に、どのような状況下にあるか?早々にコロナ禍により海外渡航が長期に渡り事実上不可となりました。最近ではようやく各国門戸を開き始めましたが、今後も予断を許さないと言えます。

他にもロシアによるウクライナ侵攻。令和になる前では、今でこそバイデン政権ですが、それまでは「Me first」のトランプ政権やブレグジット(英国のEU離脱)等、「分断」というよりも「亀裂」の印象が強いグローバル動向。

今回はそんな先々不透明な状況下でもグローバルで期待される「グローバル人材」について令和の視点でひも解いていきます。

グローバル人材とは?

そもそもグローバル人材って具体的に何を指しているの?範囲は?定義は?よくよく考えると何だろうと思いますよね。何となく共通認識が取れる便利な言葉ゆえに、気に留める人もあまりいないのではと思います。しかし、今後ビジネスパーソンとして重宝されるグローバル人材になるには、しっかりその定義(=要件)を理解しておく必要があります。そのために、先ずはグローバル人材の定義を確認してきましょう。

国による定義

文部科学省や総務省、経済産業省等で用いられる「グローバル人材」は表現は違えど大本となるベースは同じであり、以下を有する人材がグローバル人材と定義されています。

要素Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力
要素Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任
感・使命感
要素Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

このほか、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等

出所:グローバル人材の育成について(文部科学省)

尚、私達TIERの視点では、特に上記のうち「幅広い教養」は海外において特に重要だと考えています。特に令和の時代、世界ではSDGsや資本主義/脱資本主義の議論もあり、益々会社やブランドの存在意義、ビジョン、ミッション、昨今で言うところの「パーパス」が重要視されています。そのため「儲かる/儲からない」だけの視点でビジネスをしていると、今後より重要になる「共感」を得ることが難しくなります。ビジネスのことしか分からないでは厳しく、視座をあげる必要があり、ゆえにベースとなる幅広い教養が必要になります。

企業が求めるグローバル人材の素質・能力

それでは、企業サイドはグローバル人材についてどのように捉えているのでしょうか。経団連が実施したアンケート(会員/非会員企業両方含む)結果ベースでは、グローバル人材に必要な資質・能力のトップ3は以下になります。

1. 「既成概念にとらわれず、チャレンジ精神を持ち続ける」

2. 「外国語によるコミュニケーション能力」

3. 「海外との文化、価値観の差に興味・関心を持ち、柔軟に対応する」

出所:グローバル人材育成のための経団連の取り組み(経団連)

いずれも国が定義する内容と同じですが、こちらのデータではアンケートなので、重視度に濃淡が表れている点が興味深いですね。企業が一番重要するのが「語学」や「異文化の理解」ではなく、「既成概念にとらわれずにチャレンジすること」である点は、グローバル人材を目指す方は念頭に入れておきましょう。当たり前ではありますが、極端な話、英語だけできれば良い訳ではありません。

一点気になるのは、深い教養の視点が上位に含まれていない点です。他の選択項目では、日本の歴史の理解や、現地での公共心や倫理観等の項目がありましたが、上位ではありませんでした。2013年のデータであるため、当時は資本主義への疑問や会社の存在意義等の視点はあまり議論されていなかったことも背景にあるかもしれません。令和に入り、再度アンケートを取ればおそらく上位に入ってくると考えられます。

グローバル人材はなぜ必要?

グローバル人材の定義を理解したら、次は「なぜグローバル人材が必要とされているのか?」について背景を押さえていきましょう。ポイントは大きく3点あります。

1. 日本の国力の低下

皆さんは「国際競争力ランキング」をご存知でしょうか。企業の幹部向けにプログラムを提供する世界的にも著名な研究教育機関 IMD( International Institute for Management Development)が毎年発表しているデータです。

前述の日本の省庁によるグローバル人材育成のレポートでもIMDの国際競争ランキングは取り上げられており、政府が注視するデータのひとつです。当該ランキングでは以下の4大項目を基に評価されています。

  1. Economic Performance – 経済状況
  2. Government Efficiency – 政府効率性
  3. Business Efficiency – ビジネス効率性
  4. Infrastructure – インフラ

つまり、政府はきちんと機能しているか、インフラはしっかり整備されているか、その上でビジネスはきちんと回っているか、その結果、経済はどれ位のパフォーマンスを挙げているか?つまり経済・ビジネス視点で国の総合力を評価しています。

日本は1990年前後は堂々の1位でしたが、現在は63カ国中34位にまで転落。対象国のうち遂に後半から数えた方が早い順位まで下がってしまいました。危機感を覚えずにはいられないのも納得ではないでしょうか。グローバル人材が必然と重要視される所以です。

2. 人口減による内需縮小

次に人口減による内需縮小の視点です。ご存知の通り、既に日本の人口は減少しています。下図は令和4年版高齢社会白書からの引用です。このデータは5年刻みですが、実際には2008年の1億2,808万人をピークに減少しています。よりセンセーショナルなのは今後の人口減少のスピード感です。あと30年もすれば、人口は1.2億人から2千万人近く減少し、1億を割る見通しです。

出所:令和4年版高齢社会白書(内閣府)

これを人口が適正に戻ると捉える見方もありますが、ビジネス上では顧客数(エンドユーザー/消費者)の純減を意味します。企業の付加価値の向上や生産性改善を後押しする施策を政府が推進していますが、企業にとっては大きな課題であることに間違いありません。

いずれにしても、国内の人口減は、ほぼ不可避と考えられるため、内需は縮小します。それを受けて、間口を外需まで拡げる方向へと舵を切るのは妥当な流れと言え、故にグローバル人材が求められます。

2. ローカルビジネスでも客層がグローバル化

更に、言葉だけでは一見無縁に思える「ローカルビジネス」においても、国内の飲食業や小売業とて、当然のごとく無縁ではありません。コロナ禍により大きく後退しましたが、それまではインバウンド訪日客が2019年は3188万人も訪れています。それらの業種ではインバウンド需要で支えられていたという業者も少なくありません。

「旅行」という非日常の彼らは消費力も旺盛です。内需縮小により日本人向けにモノが売れなくなると、企業がインバウンド需要を取り込む戦略へとシフトすることは必然と言えます。結果として、海外の人達とコミュニケーションを現場で取れる人は当然ながら重宝されます。

コロナ禍によりここ2年はインバウンド需要がほぼなくなりましたが、2022年に入ってから足元は正常化しつつあります。今年以降、ローカルビジネスでもインバウンド需要獲得のためにグローバル人材がより求められることは間違いないでしょう。

3.  政府施策による国内外国人材の増加

また政府も人口減による労働力(人材不足)を補うために、以前は高度外国人材の受け入れ、最近では特定技能実習生受け入れに注力しているのは周知の通りです。ご興味のある方は首相官邸の成長戦略ポータルサイトをご確認ください。ここでは、厚労省のデータで在留資格別外国労働者数の推移をみていきましょう。

 

出所:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年 10 月末現在)厚生労働省

コロナ禍により2020年2021年は停滞しましたが、それまでは前年比で10%を超える高い水準で増加していました。業種別にみても万遍なく増えていることが分かります。

もう少しイメージし易いように日々の生活で考えてみましょう。例えば、介護や看護業界では、企業も人材不足からフィリピンや台湾等から来日する人材を雇用していますし、都心ではコンビニや飲食店でもアジア系の人達が働く姿は当たり前の光景となっています。

勿論、一定の日本語を話せる前提ですが、現場や会社としての競争力を上げるためには、彼らの能力を最大限発揮できるように企業側もサポートする必要があります。

もし企業側にグローバル人材がいれば、例えば彼らに時折でも英語(あるいは彼らの第一言語)で会話することで、平等であることが伝わる心理的安全性を与え、彼らの仕事の課題の早期特定や「多様性」ある提案等の良質なフィードバックが受けられ、組織のアウトプット向上に寄与します。

また、異文化交流、特に現地での生活経験がある人は、マイノリティとしての彼らの気持ちが痛い程よく分かるので、そこでもさりげない会話の端々で彼らに心理的安全性を与え、彼らの士気向上、結果として組織のパフォーマンスも向上が期待できます。

このように政府の方針でもある以上、今後もコロナが収束するにつれて、日本国内の仕事においても、外国の人達とコミュニケーションをとるケースは業種を問わず増えるでしょう。その結果、益々グローバル人材が重宝されていきます。

グローバル人材の働き方と仕事内容

それでは、続いてグローバル人材の働き方と仕事内容についてみてきましょう。細かく考えるとキリがありませんので、いくつか代表的な働き方をご紹介します。

働き方

まずは国内を前提にどのような働き方があるのかみていきましょう。

1. 外資系企業で働く

先ずは頭に浮かびやすい外資系企業。上司が外国人、同期も外国人がいる、打ち合わせでは、本国やグローバルの各国の現地法人とテレカン等々。基本は英語になりますし、外国人と接する機会も多いので、グローバル人材として鍛えられていきます。

しかし、注意点として二つあります。外資系企業の場合、(リージョナルヘッドを除き)本来は日本市場を対象とした法人です。それが意味するのは、例えば海外駐在がない方が一般的であることです。勿論、海外駐在のある企業もありますが、基本はその認識の方が無難です。「日本が本国であり駐在先として現地法人がある」日本のグローバル企業と「海外のある国を本国として、彼らから見た駐在先として日本がある」外資系企業の違いですね。

またもう一つの視点として、上記に付随しますが、平社員の場合は、業務上、日本語しか話さないというケースも少なくありません。例えば外資系の保険会社のセールスをイメージすれば分かり易いかと思います。なので外資系で働くことでグローバル人材の素養を鍛えることができるとは限らないので注意しましょう。

外資系企業の中でもグローバル人材を求める企業の期待値は高いです。語学力は勿論のこと、日本人の暗黙の了解を是としないため、より高い論理力も求めます。年功序列ではない外資系企業の場合、得てして日本の企業より給料が高いことから優秀な人が入社するために鎬を削っています。難易度は高いと認識しておきましょう。

2. 海外展開している日本企業で働く

続いては、グローバル展開している日本の企業で働くことです。企業にもよりますが一般的には外資系企業よりも入社の難易度は低いといえます。但し、業界トップクラスのグローバル企業はどこも入社難易度が高いことは言うまでもありません。

海外駐在?海外出張?国内完結でとにかく英語?

「海外駐在したい」「海外出張ベースの方が良い」あるいは「駐在も出張も求めてないけど一緒に働くスタッフと英語で仕事をしたい」等々、色々な動機がありますよね。一般論で語るのは無理がありますが、海外に駐在したい場合は、前提が現地法人を有する企業になります。そのため業界大手企業の方が枠は多いと言えます。但し、枠が多いとはいえ、社員同士での競争も激しいので、その枠に選ばれるためには相応の努力も必要です。

駐在希望なら若手海外研修制度の有無もチェック

最近では優秀な人材を惹きつけるために、若手海外研修制度等、入社して数年以内に海外駐在できる制度を導入している大手企業も少なくありません。ちなみに若手海外研修制度を活用すると、早く駐在できますが、その間と帰国してから国内勤務がまたゼロカウントで長くなるので、通常の駐在までの期間がその分伸びがちです。そのため先に5年くらい国内で働いてから5年海外駐在するといった従来の方が良いとする考えもあります。結局は、自分のキャリアをどうしていきたいのかですね。

海外出張ベースなら中堅・中小企業でも十分機会あり

冒頭の内需縮小に大いに関係していますが、中小企業も何もせずに手をこまねいている訳にはいかないので、海外に積極的に活路を見出そうする企業も少なくありません。大手企業と比べて経営リソースに限りがある中小企業は現地法人を持つ余力はなくても輸出ベースで海外展開しています。

キャッシュが比較的多い企業で現地での事業が軌道に乗っていれば、頻繁な海外出張も期待できますし、そうでない企業でも、例えば年1回、2回の展示会に出展して現地の見込み客と商談するケースは王道パターンの一つです。そして今は1ドル136円(2022年7月時点)と驚異的な円安です。為替は生き物ですが、輸出においては市場の機会といえます。

社内公用語を英語とする企業での勤務

日本にいて殆どが日本人でも日本人同士での会話も含めて社内は英語で統一する社内公用語英語化。代表的な企業として楽天とユニクロが挙げられます。グローバル企業に限られてしまいますが、日本にいながらも基本仕事で英語しか使わない環境は語学力を高める上ではとても良いといえるでしょう。

但し、前述の通り、グローバル人材の要件は語学力だけではありませんので、そのあたりは念頭に置いておきましょう。勿論、上記2社の場合は国内外、社内外で色々な外国の人達と接する機会が多いと思いますので問題ないと思います。

3. 国際機関で働く

以降は、民間企業ではなく、パブリックセクターで働く選択肢をみていきましょう。先ずは国際機関です。国連等で働くことに憧れる人は多いのではないでしょうか。しかしながら、原則、採用時の競争がグローバルであり、また通常は修士以上の学位を取得している必要があるため、要件は厳しいです。英語も日本人の中での競争ではなく、グローバルでの競争ですから非常に難易度が高いと言えます。32歳以下の特別枠(YCC)であれば修士号をもっていなくても学士号があれば大丈夫ですが、それでも競争は激しいと言えます。

4. 外交官として働く

外交官として働くためには国家公務員の試験に合格する必要があります。外交官は、総合職と専門職員に分かれており、業務内容は異なりますが、海外を向いて仕事をすることに変わりありません。日本人として日本を背負い、海外と外交をする、誇りある働き方といえます。また試験には年齢制限があることも注意が必要です。

5. 海外に関連する独立行政法人で働く

こちらで分かり易い例は、例えば外務省ラインのJICA、経産省ラインのJETROが挙げられます。前者は青年海外協力隊でおなじみの新興国開発支援を行います。JETROは日本企業の輸出支援や対日投資促進を行う独立行政法人です。どちらの職員も駐在や出張含めて海外で働く環境があり、グローバル人材にお勧めの勤務先のひとつと言えます。

6. 独立して働く

最後に独立して働く方法です。一念発起で自分で海外で事業を起こすことも良いですし、国内で貿易会社を立ち上げても良いですし、インバウンド向けの事業を展開するのもいいかもしれません。何かしらの事業を海外企業と業務提携して日本で展開することも可能でしょう。海外の企業に連絡して日本の窓口として活動する人も決して少なくありません。

専門性のある方であればコンサルタントとして例えば中堅・中小企業の海外展開の顧問になる等の方法もあるでしょう。その場合、前述のJICAやJETROから業務委託の形でエキスパートとして働くことも可能です。但し、勿論公募になるため、専門性があることや一定の語学力がないと選ばれる可能性は低いことに注意しましょう。また採択されても、評価次第で仕事が殆どこなくなるケースも少なくありません。

いずれにしても独立する場合は、自由度が高く成果が出れば報酬も青天井ですが、雇用されている訳ではないため、成果が出ないと簡単に仕事を切られてしまう点は念頭に置いておきましょう。

仕事内容

続いてグローバル人材の主な仕事内容をピックしましたので順にみていきましょう。

1. 経営/事業運営(マネジメント)

グローバル企業の海外現地法人(販社、工場、R&Dセンター等)の立ち上げやマネジメントは分かり易い例ですね。経営や事業マネジメント経験がないと務まらないため難易度の高い業務と言えます。尚、前述の顧問や社外取締役として関わることもここに含まれますね。

2. 海外マーケティング

海外マーケティングは現地でのF/S(販売実現可能性調査)から始まり、現地でのマーケティング戦略を検討し、現地でのビジネスを軌道に乗せるために極めて重要な業務です。海外展示会の出展は勿論、海外向けにオンライン広告やプレスリリース等を配信して認知度を高める等、同じ業務を国内で行うには文化も相手も商慣習も異なるためそれらを現地でも攻略できる経験とスキルが求められます。

3. 海外営業

海外営業についてみていきましょう。まず、国内営業から海外営業にステップアップを狙う方は少なくありません。世界をまたにかけて、海外の企業と商談をしてクロージングまで出来ると本人にとって大きな自信に繋がることが想像に難くありません。

尚、海外マーケティングと海外営業については、中堅・中小企業の場合は、海外営業メインで、兼務として海外マーケティングをしているケースが多いと言えます。日本の企業の場合、営業については経営層も理解がありますが、マーケティングについては社歴の長い企業であるほど、その重要性を軽視する印象です。

一方の先端的な日本のグローバル企業や外資系企業はマーケティングとセールを分けている企業も少なくありません。このあたりは、「入社したらやりたい仕事させてもらえなかった」とならないように念頭に置いておきましょう。

4. 現地調達/仕入れ

BtoC商材であれば、例えばフランスのメゾンエオブジェで買い付けをする、あるいは様々なメディアで仕入れ候補を調べて、現地に渡航し、街を歩きながら良い商品を探しては買い付ける。現地の蚤の市でアンティーク雑貨を購入する等、実際には骨の折れる仕事ですが、想像するとなんだかとても楽しそうな業務ですよね。

BtoB、産業材視点ではどうでしょうか。日本の大手製造業は、以前から価格競争力向上のための現調化率向上が慢性課題であり、品質が良く価格競争力のある優れた現地サプライヤーを発掘することが重要な業務です。現地調達の計画をし、現地サプライヤをリスト化し、スクリーニングし、価格交渉をし、最終的に品質・納期管理をします。

特に、新興国で作られる製品は技術的な側面や商慣習の違いから日本の品質基準を満たさない不具合品が紛れているケースも少なくありません。調達においては、国内から海外に代わることで一気にハードルが高くなり、経営に与えるリスク(リコール問題等に発展するリスク)も大きく、責任も重大ですが、やり甲斐のある業務と言えます。

5. 販売/接客

こちらはホスピタリティ/ツーリズム業界をイメージすると分かり易いと思います。例えばホテルでの接客ではインバウンド顧客の対応に英語での対応が求められます。CA(キャビンアテンダント)であれば、国際線では多くの外国人に接客をします。ビジネスクラスやファーストクラスでの接客ともなれば、深い教養も求められます。尚、グランドホステスについては、羽田空港も成田空港もある時期を境に一気にヒトがいなくなり、機械に置き換わってきている印象です。無くなることはないかと思いますが、採用枠は減少の一途を辿っている印象を受けます。

6. 専門職/技術職

専門職/技術職は幅が広く、分かり易いところではエンジニア(ハードウェア、ソフトウェア両方)やデザイナー、また会計士や弁護士等のプロフェッショナル等、が挙げられます。これらの業務は会社の規模や商材(ハードなのか、ソフトなのかetc.)等で必要な職種のジャンルは異なりますが、原則どの組織でも専門職/技術職はあります。業務の本質は変わりませんが、海外向けになることで注意しておきたい点があります。例としてエンジニアとデザイナーを挙げてみましょう。

生産工場で働くエンジニアの場合には、現地工場では日本人ではなくローカル人材が働いています。ITエンジニアの場合は、そもそもリモートのケースも多いかと思いますが、オフショアの場合は現地人、所謂テック系企業であれば世界中の高度外国人材と共に働くことになるでしょう。

共通して相手は日本人ではないので、残業を是とする空気、上司が飲み会に強引誘う等の社内接待、人前で罵声を浴びせる、同調圧力、空気を読むことを前提とする等、日本の古き悪しき社内慣習を持ち込まないように注意しましょう。

デザイナーにおいては、現地(特定の国)と日本では一般論に昇華させた場合の感性も色使いもトレンドも異なります。当たり前ですが、現地のデザインについてリサーチをした上で、自社(クライアントワークの場合はクライアント)の存在意義や世界観、ベネフィット等を勘案し、現地での自社優位性に繋がるデザインをする必要があります。

兎にも角にも日本の常識を持ち込まないように注意しましょう。グローバル人材の要件を思い出してみて下さい。商慣習も含めて異文化への理解、リスペクトの気持ちは忘れないように心がけましょう。

勤務地

最後に勤務地の視点でみてみましょう。勤務地については今まで見てきた通り、グローバル人材は国内外問わず働くことが可能です。今の時代、リモートも一般化しつつありますので、場所の制約は日に日になくなっていきますが、ここでは単純化して国内と海外で働くメリット・デメリットをみていきましょう。本人の置かれた状況と目的次第で同じ事でもメリットにもデメリットにもなる点はご留意ください。

海外で働くこと

メリット
  • 24時間365日言語のシャワーを浴びるため必然と言語力が上がる
  • 異文化やライフスタイルの違いを経験することができる
  • 現地の商習慣を体で理解することができる
  • 日本を客観視することができる
  • 日常でも新しいことの連続であり刺激的な生活を送れる
  • 現地勤務経験は評価視点として分かり易いため市場価値は上がる
デメリット
  • 言語力がないと孤立する可能性もある
  • 新しい環境であるため適応するまでは心身への負荷は高い
  • 基本的にはその国ではマイノリティであり続ける(あくまで日本人)
  • 日々の生活で犯罪に巻きまれる可能性が日本より高い
  • 日系企業に勤務する時、ナショナルスタッフ採用と駐在員と比べて、
    低賃金になりがち。

国内で働くこと

メリット
  • グローバル人材の必須スキルである言語力を磨くには言語に触れる量が
    海外勤務と比べて少ない
  • 生活環境変化は海外と比べると限定的なため生活が心身ともに安定しやすい
デメリット
  • 海外勤務、あるいは生活経験がない場合、グローバル人材としての能力値や深みにおいて、相対的に限界があり、特に対外的(履歴書等)にはそのように評価されやすい。

コロナ禍とグローバル人材の需要

さて、コロナでは感染者数の乱高下を繰り返していますが、2022年に入り多くの国がこれまで以上に各種制限解除を推めています。油断は禁物ですが、2022年以降はコロナ禍によるグローバル人材需要への影響も、以前の渡航制限によるインバウンド需要の減少を除き、そこまで大きくは変わらない、むしろ「ある変化」により益々求められることも十分に考えられます。ポイントをいくつか挙げてみましょう。

1. 有形商材視点 – 貿易の物量は既に回復

以下は貿易統計のデータです。先ず長期では右肩上がりであり、特に特筆すべき点は、2020年は減少しているものの2021年には既に過去2番目に高い取引額まで戻っている点です。

2008年のリーマンショックで2020年と同様に減少していますが、その後はまた上昇気流に乗っていることが分かります。むしろ2008年の方が下落率が大きいのが見とれますし、既に回復していることから、今後も一時的な落ち込みはあれど、今後のコロナ禍の影響は克服できるものと考えられます。

対世界 輸出入額の推移

出所:財務省貿易統計

2. 無形商材視点 – 巨大化するデジタル貿易の存在

統一された定義はないものの「デジタル貿易」という言葉が生まれ、課税面から無視できない規模になり問題視されている通り、売買の対象がハードなプロダクトだけでなく、海外企業や海外の個人が制作したアプリ等の利用含めて、売買の対象が物理的な形のないモノにまで及んでいます。国を跨いでそのような商材を取引する企業にとって、引き続きグローバル人材は必要であり、デジタル貿易領域ではそもそもパンデミックによる影響は限定的といえます。

3. コロナ禍による日本の現地法人撤退も限定的

2020年頃はコロナ禍により海外駐在員の一時的な帰国も含めて人員削減等も行われていましたが、経産省「海外事業活動基本調査」ではコロナ禍であった2020年の日本企業の現地法人の撤退数は、770社であり、過去10年では大きい数字ではあるものの、2015の724社、2017年の725社とそこまで大きくは乖離していません。撤退には大きなコストが伴うため、2020年は様子見もあると考えられますが、2015/17年と2020年の数字との差分がコロナに起因する撤退数だと想定すると、コロナ禍による現地法人徹底数は限定的と考えられます。

出所:第51回 海外事業活動基本調査概要(経済産業省)

4.リモート対応の定着が海外とのコミュニケーションを促す

しかし、より重要な視点は、むしろ今まで以上にグローバル人材のニーズが増える可能性が高い点です。背景には、リモート対応が各国で通常の業務形式のひとつとして定着したことが挙げられます。リモートで対応する場合に、相手が国内の取引先であろうが、海外の取引先であろうが、当人にとっての物理的環境は何も変わりません。故にこれまで以上に、海外の企業とのコミュニケーションがリモート対応により増えていく見方の方が現実的といえます。実際にそれに気づいた企業が海外営業担当者にどんどんオンライン商談をするように号令をかけている企業も少なくありません。

終わりに

さていかがでしたでしょうか。結論として、令和の時代にグローバル人材の需要は減少するどころか、益々増加することが想定されます。本記事がグローバル人材を目指す方に何かしらの参考になれば幸いです。尚、TIERでは、グローバル人材採用支援を法人企業様に提供しております。グローバル人材として働きたい個人の方、グローバル人材を雇用したい企業の方はお気軽にTIERまでご連絡下さいませ。

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