越境ECを始めたいが、「どこから手を付ければ良いかわからない」というご相談をよくいただきます。特に中小・中堅の製造業、伝統工芸・ライフスタイル・デザインプロダクトなど、“ものづくり系”企業からのニーズが顕著に増加していると感じています。
また、外部に委託せず「できる限り自社で制作・運用したい」というご希望も多い一方で、予算面の制約から「なるべくコストを抑えたい」という強い要望も存在します。
越境ECニーズの高まり
コロナ禍をきっかけにオフライン販売のチャネルが閉ざされ、企業は否応なくオンライン展開へとシフトしました。この流れの中で、物理的距離を超える「越境EC」への関心も急速に高まっています。
しかし、実際に取り組みを検討している企業の多くは、「全体像が見えていない」「サービス選定の優先順位が不明」といった課題を抱えており、進行が滞るケースも少なくありません。特に、決済・物流といった越境ならではのインフラ面に不安を感じている企業も多い印象です。
今回は、特に「どのサービスを選べば良いのかわからない」「選定基準が不明」といった声に応える形で、越境EC構築時の判断軸について整理します。
自社越境ECサイト vs Eマーケットプレイス活用
まず最初に検討すべきは、「自社でECサイトを構築するのか、それとも既存の海外モールを活用するのか」というチャネル戦略です。国内でも、楽天やAmazon、Yahooショッピング、あるいはCreemaなどのマーケットプレイス活用か、自社ドメイン型ECかを選ぶのと同様です。越境でも、複数チャネルを組み合わせるケースも含めて戦略的に選定する必要があります。
国産EC制作ツールでの越境対応について(非推奨)
近年は、BASEやSTORES、カラーミーショップ、MakeShopなど、国産ツールでもECサイトを手軽に制作可能になりました。CMSによっては多言語対応もできますが、以下のような越境対応には限界があります。
- 決済画面が一言語のみ対応
- 海外向け住所入力欄の最適化が不十分
- UI/UXが国内仕様前提の設計
その結果、ユーザーの離脱を招き、販売機会を損失するリスクが高くなります。国産ツールでの越境展開は、少額での小さなテストマーケティング程度であればいいですが、それでも上記理由から正しくテストマーケティングができるかといえば懐疑的であり基本的には推奨いたしません。
越境EC構築における外部サービス選択肢
本格的な越境ECサイトを構築する際に検討される代表的なCMS・カートシステムは以下の通りです。
- Shopify
- WordPress(+WooCommerce)
- Magento
- EC-CUBE
他にもJimdoやWix等のCMSやJugem cartやLive commerce、おちゃのこ、マルチリンガルカート等のカート系サービスを活用した制作方法もありますが、ユーザビリティや拡張性・評判を踏まえると、上記4種が現実的な選択肢です。
海外モール(Eマーケットプレイス)の活用
それでは海外オンラインモールの活用はどうでしょうか?国や地域ごとにあるAmazonを筆頭に、ebay、T mall、Lazada、Qoo10等、また視点を変えてハンドメイドアプリのグローバルメジャーであるEtsyも商材によってはありでしょう。最近ではJETRO等の行政もモールを活用した施策を独自に行っています。代表例は以下の通りです。
- Amazon(各国)
- eBay
- Tmall
- Lazada
- Qoo10
- Etsy(ハンドメイド・クラフト系)
商材の特性によって向き不向きはありますが、短期的にスピーディに海外販売を始めたい場合は有効です。JETROなども各種モールとの連携支援を実施しています。
チャネル選定のポイント
つまり方法はいくらでもあるので、何を基準に判断すれば良いかがポイントとなります。ここでは大事だと思う3つのポイントをご紹介したいと思います。
サービス選定基準① ユーザービリティ
操作性と置き換えても良いのですが、ユーザービリティがよくないと何が問題になるのかポイントは2つです。
「世界観が作れない」・・・ブランディング、購買に直結する
ここは極めて重要であり、操作が複雑であったり、使い勝手が悪いとこだわりたい(=世界観を表現したい)部分でレイアウトを変える際に結局CSSが必要になったり、必要にならなくても素人っぽいページになったりと、特にBtoCのメーカーにとって致命的と言えます。私たちが実際に製作した越境ECや国内ECサイト、通常の海外向け会社サイトでも50%は上記前述のサービスを自社あるいは業者が製作・運用していて、チープな世界観であったり、使い勝手が悪いから変えたいというケースです。そもそも越境ECでも国内ECでも目的はモノを販売することです。モノを販売するには商品の良さは世界観をレイアウト全体でも表現していく必要があります。しかしながら以前からある決済カートは世界観を作ることができず、つまりは使い勝手も悪く、売り上げに繋がらない負のスパイラルとなります。
「続かない」・・・機会損失に直結する
当然ながら使い勝手が悪いと自社で行っている場合にはサイトの運営が続きません。途中で頓挫することが目に見えています。越境ECではMagentoをベースとして作成する制作会社もいますが、Magentoは様々な機能があり多機能とされる謳い文句がある反面、その分管理が相対的に複雑です。そのため、自社で運営するには相対的にハードルが高く、結果的に業者に任せるといった形になることも少なくありません。そのあたりはきちんと先々の運営を見据えて検討するようにしましょう。
サービス選定基準② コスト
オープンソース系(WordPress, Magento etc.)
WordPressやJimdoやWix、Magento等のオープンソースは無料で使用できる点が魅力です。但し、決済インフラが必要になるので、もちろん購入時には決済手数料が発生します。オープンソースで越境ECサイトを制作するのであれば、初期費用は低めでも、サーバー代・決済手数料・社内工数を正確に見積もる必要があります。
SaaS型サービス(Shopify etc.)
反対に、オープンソースではなく越境ECや国内ECサイト構築サービスを利用する場合には、月額利用料・決済手数料・制作工数をトータルで試算し、比較検討しましょう。
サービス選定基準③ セキュリティ
最後に忘れてはいけないのがセキュリティになります。最近では、ブルートフォースアタックやSQLインジェクションやクロスサイトスクリプトといったWeb上での悪質な攻撃に対して対策を講じていないとデータの改ざんや情報漏洩により事業存続自体に致命的となります。
また、クレジット情報の管理等は特に重要であり、カートを使用していてもサイトのシステムにアカウント機能等で情報が残る構造になっていると漏洩時には同様に大惨事になります。使用するサービスのセキュリティは対策を講じている内容が記載されているため、最低限どのような対策が講じているのか、またオープソース等であればどうのようにしてセキュリティを高次のレベルで維持していくのかを把握しておく必要があります。
まとめ
越境ECの立ち上げにあたっては、単に「作れるツール」を選ぶのではなく、「売れるための仕組み」を構築できるサービスを選定することが重要です。初期段階ではすべてを完璧にする必要はありませんが、本稿でご紹介した3つの評価基準を軸に、まずは最適なチャネル設計から着手してみてください。今後の海外展開の土台をしっかりと築いていきましょう。
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