海外市場への進出を検討する際、現地調査の段階でいかに「自社製品の中から輸出に適した製品を適切に絞り込めるか」が、成功の鍵を握ります。多くの企業が「まず国を決めるべきでは?」と考えがちですが、実際には製品ありきで戦略を立てる方が、限られたリソースを最大限に活かす上で合理的とも言えます。
国からではなく、製品から考える海外展開戦略
「マーケットインの視点なら国から考えるのでは?」という意見もありますが、特に中小企業や製造業の輸出戦略においては、それが最適とは限りません。理由はシンプルです。先に進出国を決めてしまうと、その市場でニーズがある製品と自社の強みが一致しない可能性が高く、調査コストが無駄になりやすいためです。逆に、「国内で実績のある製品」から輸出候補を選び、その後に適した海外市場を見極めていくことで、現地バイヤーや流通パートナーとの接点もスムーズになります。
製品選定のカギは「国内実績」と「自社優位性」
ローカライズを前提に国内実績を重視するアプローチは有効です。「日本で売れている=海外でも売れる」とは限りませんが、海外展開を初期段階から成功させるには、既に国内で販売実績があり、自社の強みが発揮できる製品を軸に考える方が結果的に効率的に海外展開が可能になるとも言えます。そこで、更に現地市場に応じたローカライズ(現地対応)も視野に入れておくと、製品選定の精度が高まります。
【ステップ】輸出対象製品の選定手順
以下の4ステップで、現地調査前に有望な輸出製品候補を絞り込みましょう。
1. 国内で販売実績のある製品をリストアップする
まずは、国内で販売数量が多い製品やカテゴリを抽出します。「日本で売れないが海外でなら売れるかも」といった仮説は、限られたリソースで進めるにはリスクが高いと言えます。
2. 自社の競争優位性が高い製品を選定する
次に、抽出した製品の中から、同業他社と比較して競争力が高い製品群をピックアップします。
ここでの競争力の評価基準には以下のような要素が含まれます。
- 顧客の評価や満足度
- 継続購入率
- 機能や性能の差別化
- ブランド力や認知度
将来的に海外市場で戦うためには、知的財産や認証対応などの追加コストも視野に入れる必要があるため、現段階で競争力が見劣りする製品は候補から外すことが賢明です。
3. 売りやすさ(販売性)の観点も考慮する
最後に、販売チャネルや代理店の意見も取り入れて、売りやすい製品を選びます。例えば以下の視点が挙げられます。
- 代理店が扱いやすい(パッケージ、価格帯、サポート体制など)
- 営業現場で「引き合いが多い」製品
- エンドユーザーへの訴求ポイントが明確
こうした情報は、営業担当や代理店へのヒアリングを通じて得られます。
4. 規制・認証観点から評価する
海外市場に製品を展開する際には、輸出先国の規制・認証要件をクリアできるかどうかも重要な評価軸となります。
例えば以下のような要素を考慮する必要があります。
- 対象国における製品カテゴリ別の法規制(安全基準、衛生基準など)
- 必須認証(例:CEマーキング、FDA認可、RoHS、CCCなど)の有無
- 原材料表示、ラベル表示、パッケージ基準などのローカル要件
- 知的財産権の保護状況や模倣リスク
これらの規制・認証が高コストかつ手間がかかる製品は、初期段階の海外展開においては非効率になる可能性があります。逆に、比較的スムーズにクリアできる製品であれば、現地投入までのスピードが早く、スモールスタートしやすいという利点があります。そのため、自社のリソースやスケジュール感に照らして、認証取得や規制対応に無理のない製品を優先的に選定することが望ましいです。
5. テストマーケティングの実施で市場反応を確認する
製品を本格展開する前に、テストマーケティングを通じて実際の市場反応を把握することは、リスクを抑えた海外展開において非常に有効です。絞り込んだ製品が本当に現地市場で受け入れられるかを検証するプロセスになります。
オンラインでのテスト施策(低コスト・スピーディ)
- 越境ECでの限定販売(Amazon, Shopee, Rakuten Global Market等)
- SNS広告(Meta, TikTok, LinkedInなど)を活用した訴求テスト
- ランディングページ+ABテストによる訴求メッセージ検証
- 現地ターゲットへのオンラインアンケート調査
これらは比較的低コスト・短期間で反応を得られるため、初期段階での市場感覚を掴むのに適しています。
オフラインでのテスト施策(実購買・バイヤー反応の獲得)
- 現地展示会や見本市への出展
- 商社・現地パートナーを通じたバイヤーヒアリング
- 店頭トライアル販売(試験販売)
- 商談会への参加(JETRO、地銀連携のミッションなど)
こうしたオフライン施策では、現地の商流に近い環境で実購買に近い反応を得られるため、製品改良や販売戦略のチューニングに役立ちます。
テストマーケティングの結果をもとに、現地適応の方向性や製品のポジショニングを再調整することで、本格進出後の失敗リスクを大きく軽減できます。小さく試して、大きく伸ばすアプローチであり、現実的かつ効果的といえます。
まとめ – 輸出製品の絞り込みは現地調査成功の第一歩
輸出戦略を効率的に進めるためには、「国」ではなく「製品」から戦略を組み立てることが重要です。
以下の3点を押さえて、自社の強みを最大限に活かせる製品を選定しましょう。
- 国内での販売実績
- 他社と比べた競争優位性
- 代理店・流通視点での販売性
焦らず一歩ずつ、計画的に製品選定を進めることが、海外展開を成功に導く近道です。
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