多言語サイト制作時のポイント – ドメイン編 –

多言語サイトを制作する場合に、注意しておきたい点は多数あります。

本記事は、「多言語サイトを制作することが決まった事業会社の担当者さん」を想定して、日々の業務で忙しい中、サイト制作を外注する際に失敗しないように念頭に入れておくべきことについて、要点を絞り解説するシリーズです。業者に丸投げで失敗しないように注意しましょう。

今回は、「多言語サイトのドメインはどうすればいいの?」そんなお悩みを解決する内容になります。内容を正しく理解できるように以下の順番で説明します。

尚、本内容は越境ECサイトにもあてはまります。越境ECサイトを制作予定の方もご参考ください。

目次

ドメインとトップレベルドメインの理解

先ずは内容を理解するために必要な「ドメイン」と「トップレベルドメイン」についてざっくり理解しましょう。「ドメインは.comとかのあれでしょ?」「あ~URLのことね」等々思う方も多いかと思いますが、トップレベルドメインになるとハテナになる人もいるかと思います。以下ご確認ください。



example.jpを例に考えると、example.jpがドメイン、.jpがトップレベルドメインになります。ここではそれぞれの位置と「ドメインってドットで分けて考えるのね」とざっくり理解しておけばOKです。

トップレベルドメインの種類の理解

続いてトップレベルドメインの種類について確認します。ここが多言語サイトのドメインについて考える最初の検討ポイントになります。大きく二種類あります。冒頭の図にあったccTLDとgTLDです。

小難しそうなアルファベットが出てきましたが、TLDは単にトップレベルドメインの頭文字で、ccはCountry Code(国のコード)を指します。gはGenericであり、(分類上の)「属する」の形容詞です。よく汎用、分野別という言い方がされているので、上図ではそちらの表現に合わせています。それではどちらのドメインにすべきか各々のポイントを確認していきましょう。

ccTLDについて

概要

国ごとに割り当てられるトップレベルドメインです。例に挙げたexample.jpはJapanのjpですね。なので、日本に割り当てられたトップレベルドメインが.jpです。米国の場合は、.usになりです。シンプルで分かり易いですね。

メリット

先ずメリットをみていきましょう。

  • Google検索ロボットは、ccTLDをみて当該サイトはccTLDの国向けであると判断(紐付ける)するため国が1カ国のみで決まっている場合はSEO視点から良い。
  • 対象国ごとに当該国のccTLDを取得することで、サイトを分けて運営することができるため、その観点においてはオペレーションは楽。
    ※但し、独立したサイトを複数運用することになるため天秤にかける必要はある
  • サーバーの設置場所により、本来の意図とは異なる国へターゲティングされる等のリスクをミニマイズできる。
    ※但し、昨今はGoogle側もサーバーのロケーション視点による地域ターゲティングへの影響はあまりないと言及している。

デメリット

次にデメリットをみていきましょう。

  • SEO視点では1カ国に市場が限定される。
  • 現地居住者や法人、団体等でないと取得できないccTLDも少なくない。
  • gTLD(.com等)と比べて高価(但し、年間利用料で数千円程度)

gTLDについて

概要

汎用型のトップレベルドメインです。よく見かけるドメインの定番である.com。これは商業用途を想定したものです。察しの良い方はお気づきかもしれませんが、comは、commercialからきています。

また、もう一つよく見かけるのが.orgです。これもorganization(組織)を指します。元々は、非営利の組織を指していましたが、自由に使えるので営利でも使っている人もいますよね。

メリット

  • Google Search Consoleのインターナショナルターゲティングを設定することできるため、ターゲット市場の国を集客/SEO視点で自由に設定できる。
  • ccLTDより相対的に安い
    ※但し、前述の通り金額は知れている

デメリット

  • ccTLDの場合、ターゲット国での検索結果には優先して表示されるため特に考える必要はないが、gTLDの場合、ユーザー視点では、自分/自社地域向けのコンテンツなのかURL構成から判断できない可能性がある。
    ※但し、ユーザーのブラウザ環境やページのコンテンツを基に上位表示の判断をするGoogleのその他シグナルの方がより本質的であり、検討するにしてもNice to have(あったらいいね)レベルの項目といえる。

ccTLDとgTLDどちらにすべき?

さて、各々概要とメリット・デメリットをみてきましたが、正直ピンとこないのでないでしょうか?それもそのはずで自社の現状と目的によって同じことでもメリットにもデメリットにもなるからです。

ここからは「自社にとって」多言語サイトのドメインはどちらがいいのかを検討していきましょう。検討の視点や入り口は様々ですが、今回は検討しやすい入り口として次の質問から考えてみましょう。。ポイントは、デメリットを見て自社の現況、既存の制約条件を照らして消去法で考えると機械的に粛々と決まるのでお勧めです。

Q 既存サイトは日本のccTLDか?

先ず、既存サイトが日本のccTLDかを確認しましょう。.co.jpと.jpのどちらかですか?

YESの場合

もしYESであれば、相対的にはgTLD(.com等)の新規取得を推奨することになります。なぜなら、前述のメリット・デメリットに記載の通り、SEO視点では相対的には日本向けとして位置づけられるからです。

NOの場合

もしNOであれば、次の選択肢が現実的な選択肢として挙げられます。

  1. 新規で現地のccTLDを取得(例:米国市場をターゲットとする場合に.us)。
  2. 既存のgTLDを活用し「サブドメイン」or 「サブディレクトリ」方式で対応。
    ※後工程の検討プロセスのため後述します
  3. 新規でgTLD(例:example-japan.com)を海外向けに取得
  4. 既存のccTLDを活用し「サブドメイン」or 「サブディレクトリ」方式で対応。
    ※コンテンツが充実し有効なリファーラルが多数ある場合やその他経営上の方針/制約等による場合等

それでは順番に見ていきましょう。

1. 新規で現地のccTLDを取得(例:米国市場をターゲットとする場合に.us)。

こちらは意図は明確です。SEO的には最も良いといえます。但し、以下3点が前提です。

  1. ターゲット国を1カ国に絞り込んでいること
  2. 現地ccTLDの取得要件を満たしていること
    ※現地法人がある等、あるいはなくても取れる等
  3. 別途新たにサイト運用することになるためリソース/キャパがあること

特に中堅・中小企業の場合は、この方法はあまり多くありません。主な理由として、国ごとに制作・運用するにはリソースの観点からあまり余力がないことが挙げられます。

次、海外も特定国ではなく賛否はあるとして「欧米、中国とASEAN」等の間口を広げた戦略を取る傾向にあるためです。

最後に、国内サイトがしっかり集客できていない中で、海外向けサイトを予算をかけて精緻に対応できない、あるいは上層部が許可しない等の声も少なくありません。

2. 既存のgTLDを活用し「サブドメイン」or 「サブディレクトリ」方式で対応。

こちらは上記の中でもより現実的かつ妥当な選択肢の一つです。普通に考えれば、①のccTLDを新規で取得する方法を採用しないのであれば、これが次にSEO視点では望ましい(TLDの比較においては)と言えます。しかし、このような場合でも問題になるケースも少なくありません。大きく3点あります。

  • サイト構成に起因するコストの問題
    遥か昔に制作したサイトであり、工数、予算面でカスタマイズするにはかなり高額になるため、新しくサイト制作した方がコストが大幅に安くなる場合が挙げられます。レガシー問題ですね。
  • 国内サイトへの影響リスク回避
    次に、現状の国内向けサイトは検索順位もかなり良いので、ドメインパワーを活用できる可能性があるが、それよりも変にいじってSEOを悪化するリスクは回避したいというケースです。ここはきちんとやれば問題ありませんが、検索に影響を与えるシグナルは数百あると言われ、ほんの一部しか公開されていないので誰も知らない以上、確かに不安になる気持ちは分かりますよね。
  • 既存サイト制作・運用業者との問題
    最後に、既存の国内サイトを制作・運用している業者との契約があるため業者が難色を示すケースです。理由は大きくは契約上の問題と、国内サイト制作者に海外向けサイトを制作するノウハウがないことに起因します。国内サイトの業者からすると、外部のサイト制作者に色々と踏み込まれるのも困る理由等から、総じて契約や関係性の問題から断念するケースも決して少なくありません。

上記視点で特に問題なければゆ妥当な方法のひとつといえます。

3. 新規でgTLD(例:example-japan.com)を海外向けに取得。

こちらは中堅・中小企業において実は非常に多いケースです。やはり先述の国内サイトの構成や、既存の国内サイトの業者との契約・関係性の問題から、新たにサイトを制作することが業者に依頼する際には既に所与となっているケースです。

現状のドメインを使用せず、新規で現地のccTLDが取得できないとなれば、これが一択になるというケースです。

Google Search Consoleを使用することでターゲット国を指定することもできますし、グローバル全体を対象に地域ターゲティングをしないこともできます。また、完全にサイトが独立しているため、特にサブディレクトリ採用時の分析の難易度等もありません。故に、中堅・中小企業でよくみられるケースといえます。

4. 既存のccTLDを活用し「サブドメイン」or 「サブディレクトリ」方式で対応。

最後にこちらのパターン。ccTLDを基に海外向けに多言語化するのはコンテンツマーケティングやリファーラルによるドメインパワーを無視すれば、(つまりTLDの比較だけにおいては)選択肢としてはありません。但し、ドメインパワーが強力なのであれば、流用する方法も必ずしも間違いではありません。このあたり現状の国内サイトをしっかりと分析することで初めて建設的な議論が可能です。

特にターゲット国がない場合はどうすればいいの?

さて、TLDにおける最後の視点として、一部重複しますが重要な点なので再度取り上げます。一般的に日本の企業が海外展開を始めて行う際は、国にあたりがついていたとしても、早々からその国一点突破で他は狙わないとする戦略を取る企業は正直多くありません。ランチェスター戦略的にはNGですが、テストマーケティングフェーズでもあり、テストマーケティング完了の見極めも難しいからです。そのため実務的には英語サイトは欧米向け、中国語サイトは中華圏向けとするようなグローバルサイトに近い形での運用が多いです。そのような場合にTLDはどう考えればいいいのか?

先ずccTDLは外れるのは分かると思いますが、結論はgTLDでGoogle Search Consoleで地域ターゲティングをしないという形になります。これは、Googleも公式サイトで言及しています。以下抜粋です。

複数の国をサイトのターゲットに指定している場合は、インターナショナル ターゲティング レポートを使用しないでください。たとえば、モントリオールのレストランに関するサイトでカナダをターゲットに設定するのは妥当ですが、フランス、カナダ、マリのフランス語を話すユーザーも対象にするサイトで、カナダをターゲットに設定するのは問題があります。

TLDの検討における結論

以上内容から自社に当てはめて考えた場合に方向性は見えてきたのではないでしょうか?おさらいとして主な検討項目を下記します。

  • 既存国内サイトのドメインが日本のccTLDか否か?
  • ターゲット国は1カ国のみか?
  • ccTLDの取得要件を満たしているか?
  • 自社のドメインパワーが強力か?
  • 国内サイトの構成は問題ないか?
  • 国内サイト制作/運用業者との契約に問題はないか?

以上を基にTLDについて検討してみて下さい。

サブドメインかサブディレクトリか?

さて、先ほどから出てきている次の検討視点としてサブドメインかサブディレクトリかを検討するフェーズです。対象は、既存TLDを活用するケースです。そのため現地向けに新規でccLTDを取得するのであれば、この検討プロセスは不要です。新規ccLTDを取得した企業が関係してくるケースがあるとすれば、当該ccLTDのドメインパワーがとても強力である前提ですが、更に次の新しい国への展開を検討するにあたり、当該ccLTDを多言語化するケースです。

サブドメイン/サブディレクトリの概要

それでは各々についてざっくり理解しましょう。以下ご確認ください。

ドメインがexample.comの場合、サブドメインは、example.comの先頭に例えば英語圏向けにen(Englishのen)をドットで繋いだものになります。一方のサブディレクトリは、既存のドメインの直下のディレクトリ(フォルダ)を設置してディレクトリ名をenにするケースです。

次にメリット・デメリットを確認しましょう。主なポイントは次の通りです。

サブドメインのメリット・デメリット

メリット

  • ドメインを新規取得する必要がない
  • サイト分析が容易
  • サイトの分割が容易

デメリット

  • 元となるドメインパワーは引き継げない
    ※内部リンクによる影響もさほどではない
  • ゆえに検索結果までの表示が相対的に時間がかかる
  • 新規サイトの位置づけのため運用開始までの手間とコストがかかる

サブディレクトリのメリット・デメリット

メリット

  • ドメインを新規取得する必要がない
  • 新規でサイトをする必要がないため運用開始が早くコストも最小限
  • 元のドメインパワーにより検索結果までの表示が早い
  • 元のドメインパワーが強化される
    ※上記2ついずれもサイトの専門性を担保し続けた場合

デメリット

  • サーバーは、元ドメインで使用しているサーバーしか使えない。
  • (多言語サイト用途では)サイト分析が容易ではない
  • サイトの分割が相対的に容易ではない

サブドメイン、サブディレクトリの結論

上記メリット・デメリットを参考に各社判断していくことになりますが、一般論での正解はなく、自社の戦略と現状に次第でどちらが妥当かは決まります。それでも判断が難しい場合には、以下2つの視点をご参考ください。

1. データ分析なしでサイト改善はできないこと

多言語サイトの特性からサブディレクトリの場合分析が難しいです。国内サイトのドメインの下層ディレクトリに入っているためトラッキングするには何かと複雑になります。そのため、データドリブンの企業であれば、サブドメインを起用するという考えもありです。

2. コストや手間を減らし、ドメインパワーを強化していきたい

サブドメインは実質一つサイトを新たに運用することになります。そのため、コストと手間が発生します。リソース面から懸念がある場合はサブドメインの方が良いでしょう。また、国内サイトのドメインパワーがあまりない場合で、引き続き国内市場がとにかく大事という方針や経営資源の傾斜配分であればサブディレクトリの方が望ましいとも言えます。

終わりに

さていかがでしたでしょうか。ドメインって奥が深いですよね。今回は多言語サイトの視点からのドメインについてでした。もしサイトの多言語化や多言語サイトの制作を検討されていて相談したい企業様は、いつでもティアまでご連絡下さい。ティアの多言語サイト制作依頼はこちら

みなさんにと少しでもお役に立てれば幸いです。

ご参考:Google公式サイトの多言語サイトにおける見解

 

 

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TIERは、Global、DX、HRの3軸により 大手企業から中小企業、民間企業から行政まで、海外展開に必要なサービスをワンストップで支援しております。海外マーケティングセールスからデジタルマーケティング、多言語サイトや越境ECサイト制作等の海外向けクリエイティブ制作、グローバル人材採用支援まで幅広く対応しております。お気軽にお問い合わせください。

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