海外の現地調査・市場調査の方法とは?マーケティングに必須のマクロデータ分析と情報ソースを海外展開支援会社が解説

海外展開や海外マーケティングを成功させる上で、現地の市場を正確に理解することは、戦略立案のまさに第一歩といえます。しかし、「海外の現地調査といっても、何から手をつければ良いのか分からない」「信頼できる情報ソースはどこにあるのか?」といったお悩みを抱えるご担当者様も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、海外の現地調査、特にその入口となるマクロ環境分析の具体的な進め方から、私たちが実務で活用している国内外の信頼できる情報ソースまで、網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。本記事を読めば、海外現地調査の全体像と具体的なアクションが明確になるはずです。ご参考になれば幸いです。

目次

なぜ海外の現地調査でマクロ環境分析が重要なのか

具体的な調査手法に触れる前に、そもそもなぜマクロ環境の分析が重要なのか、その位置づけをしっかり押さえておきましょう。マーケティング戦略の立案は、いきなり個別の顧客ニーズや競合製品といったミクロな視点から始めてしまうと、市場全体の大きな流れや構造を見誤るリスクがあります。

例えるならば、森の全体を把握せずに、一本一本の木だけを見ている状態です。これでは、進むべき方向が正しいのか、その先に崖がないかといった判断ができません。マクロ環境分析は、その森全体、つまり自社ではコントロールできない外部環境(政治、経済、社会、技術など)を鳥瞰的に捉えるためのものです。この大局観を持つことで、初めて自社が置かれている状況を客観的に把握し、事業の機会や脅威を特定することができるようになるのです。

海外現地調査におけるマクロデータ分析の進め方【3ステップ】

それでは、具体的なマクロデータ分析の進め方を3つのステップで見ていきましょう。この手順に沿って進めることで、効率的かつ効果的に調査を行うことが可能です。

Step 1: 調査目的と仮説の設定

何よりも先に、「何のために調査するのか」という目的を明確にすることが肝要です。目的が曖昧なまま情報収集を始めると、単なる情報の寄せ集めで終わってしまい、次の戦略に繋がりません。「新規参入の可能性を探るため」「既存事業の成長鈍化の原因を特定するため」など、具体的な目的を定めましょう。そして、その目的に対して「当該国は経済成長が著しく、自社製品の需要も伸びているのではないか」といった初期仮説を立てることがポイントです。仮説があることで、収集すべき情報が明確になり、調査の精度と効率が格段に向上します。

Step 2: 情報ソースの選定とデータ収集

目的と仮説が定まったら、次はその仮説を検証するためのデータを収集するフェーズです。データには、後述する公的機関や調査会社が公表している「2次データ」と、自社で独自に収集する「1次データ」があります。まずは、広く公開されている2次データを活用し、市場の全体像を把握することから始めましょう。この段階では、日本語でアクセスできる国内の情報ソースと、より専門的で詳細な情報が得られる海外の情報ソースを使い分ける視点が重要になります。

Step 3: PEST分析等を用いた分析と示唆の抽出

収集したデータを、PEST分析(政治・経済・社会・技術)のようなフレームワークを用いて整理・分析します。データをただ眺めているだけでは、意味のある示唆は得られません。例えば、「政治的な安定性は事業継続リスクにどう影響するか?」「経済成長率はターゲット層の購買力にどう繋がるか?」といった視点でデータを解釈し、自社の事業に対する「機会」と「脅威」を具体的に言語化していく作業が不可欠です。この分析結果が、後のマーケティング戦略の根幹を成すことになります。

【国内編】海外現地調査で役立つ日本語の情報ソース

さて、ここからはデータ収集で活用できる具体的な情報ソースをご紹介します。まずは、日本語で手軽にアクセスできる国内のサイトです。海外調査の第一歩として、これらの情報源で大枠を掴むことをお勧めします。

  • JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)
    海外調査を日本語で行う際に、まず間違いなく参照することになるのがJETROのウェブサイトでしょう。各国の基本情報、貿易制度、市場レポートなどが非常に充実しており、海外ビジネスの「百科事典」ともいえる存在です。特に「世界貿易投資報告」や国・地域別の概況レポートは、マクロ環境を把握する上で必読といえます。
  • 政府統計の総合窓口(e-Stat)
    日本の各省庁が実施している統計調査の結果を、一元的に検索・閲覧できるポータルサイトです。例えば、経済産業省の「海外事業活動基本調査」や財務省の「貿易統計」など、日本企業の海外動向や貿易に関するマクロデータを客観的な数値で確認したい場合に非常に重宝します。各省庁のサイトを個別に回るよりも効率的に情報収集が可能です。
  • 各省庁(経済産業省・財務省・外務省)
    e-Statと重複する部分もありますが、各省庁のウェブサイトも直接確認する価値があります。特に経済産業省は通商政策に関する情報を、外務省は二国間の政治・外交関係や安全保障に関するタイムリーな情報を発信しています。現地の日本大使館のサイトも併せてチェックすると、よりリアルな情報が得られるでしょう。
  • 国内のシンクタンク・コンサルティングファーム
    野村総合研究所(NRI)や三菱UFJリサーチ&コンサルティングといった国内大手シンクタンクも、独自の調査に基づいた質の高いレポートを公開しています。特定の産業やテーマに絞って深く分析したい場合に参考になります。ただし、詳細なレポートは有償の場合が多い点には留意が必要です。

【海外編】より深度ある分析に不可欠な英語の情報ソース

日本語の情報ソースで全体像を掴んだら、次はより深度のある分析のために海外の情報ソースを活用しましょう。英語での検索が基本となりますが、得られる情報の質と量は日本語とは比較になりません。特に以下のサイトは信頼性が高く、私たちも頻繁に利用しています。

  • World Bank(世界銀行)
    マクロ経済データ収集の出発点として、最もお勧めできるのが世界銀行のオープンデータベースです。GDP、人口、インフレ率といった基本的な経済指標から、ビジネス環境に関する詳細なデータまで、世界各国の情報を網羅しています。サイトのユーザービリティが非常に高く、国や指標を選んでいくだけで簡単にデータをグラフ化したり、ダウンロードしたりできます。英語が苦手な方でも直感的に操作できるでしょう。出所としての信頼性も申し分ありません。
  • IMF(国際通貨基金)
    IMFも世界銀行と並び、質の高いマクロ経済データを公開しています。特に、年に2回公表される「世界経済見通し(World Economic Outlook)」は、各国の経済成長率予測などを知る上で非常に重要なレポートです。金融や財政に関するデータが充実している点も特徴といえます。
  • United Nations(国際連合)
    国連のサイトでは、経済データに加えて、人口動態、社会開発、SDGsの進捗状況など、より幅広い社会的なテーマに関するデータを得ることができます。PEST分析の「Social(社会)」の側面を分析する際に、特に役立つ情報ソースです。
  • World Economic Forum(世界経済フォーラム)
    ダボス会議で知られる世界経済フォーラムは、デジタル化、気候変動、ジェンダーギャップといった、現代社会が直面する重要なテーマに関する詳細なレポートやホワイトペーパーを多数公開しています。トレンドや特定のテーマを深掘りしたい場合に、非常に示唆に富んだ情報を得ることができます。
  • その他(ITU, Asia Development Bankなど)
    特定の分野に特化した情報源として、例えばテクノロジー関連であればITU(国際電気通信連合)、アジア地域に特化して調べるならADB(アジア開発銀行)のデータも有効です。調査したいテーマや地域に応じて、これらの専門機関のサイトも活用すると、より多角的な分析が可能になります。

海外現地調査を成功させるための3つのポイント

最後に、これまで述べてきた内容を踏まえ、海外現地調査を成功に導くための重要なポイントを3つに絞ってご紹介します。

1. デスクトップリサーチの限界を理解し、一次情報を取りにいく

今回ご紹介した情報ソースは、いずれも2次データです。これらは市場の全体像を把握するためには不可欠ですが、それだけでは競合他社も同じ情報にアクセスできるため、差別化された戦略を立てることは困難です。2次データで立てた仮説を検証し、より深い顧客インサイトを得るためには、現地の消費者へのインタビューや専門家へのヒアリングといった、自社独自の「1次情報」を取りにいく活動が最終的には必要になる、という点は常に念頭に置いておきましょう。

2. 日本語ソースと英語ソースを使い分ける

効率的に調査を進めるためには、情報ソースの使い分けが鍵となります。まずはJETROなどの日本語ソースで迅速に大枠を掴み、基本的な知識をインプットする。その上で、World Bankなどの英語ソースを用いて、より詳細なデータ分析や国際比較を行う。この流れを意識するだけで、調査の質とスピードは大きく向上するでしょう。

3. 「目的」を見失わず、分析で終わらせない

最も重要なのは、調査を「分析のための分析」で終わらせないことです。常に「この調査は何のためか?」という当初の目的に立ち返り、分析結果から「自社は次に何をすべきか?」という具体的な戦略やアクションプランに繋げることを強く意識しましょう。市場調査はそれ自体が目的ではなく、あくまで意思決定の質を高めるための手段に過ぎないのです。

より精度の高い海外現地調査なら

さて、海外の現地調査におけるマクロデータ分析の方法と情報ソースについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。自社で調査を行うにはリソースが足りない、あるいはより客観的で精度の高い調査・分析が必要だとお考えの場合は、外部の専門家の知見を活用することも有効な選択肢の一つです。

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