[dropcap]時[/dropcap]間や手間等のコストを抑えて効率よく現地調査を行う上でまず最初の分岐点となるポイントは、現地調査の段階で「自社製品の中から海外向けの戦略製品をいかに適切に選べるか」です。つまり、先ずは国ではなく「製品」ありきです。「マーケットインの発想で国からじゃないの?」ですとか「製品なんて絞り込みできてるでしょ?」と思うかもしれませんが、前者はリソースや効率性の観点から一概に言えず、後者は意外に自社製品の絞り込みができていない中で現地調査に踏み切るケースは少なくないのです。
逆の視点(国から入るケース)で考えるとわかりやすいと思います。国ありきも間違いではありませんが、特に中小・中堅ものづくり企業様には推奨致しません。なぜかというと、現地調査において国から入ると、結果として現地でニーズの高い製品が自社の競争力の高い製品と必ずしも紐付かない可能性が相対的に高くなるため、無駄に繋がり易いからです。ニーズがある製品カテゴリに進出して個別製品をゼロから作るのであれば別ですが、リソースが潤沢にない限りあまり得策ではないでしょう。
ローカライズを視野に国内で実績のある製品を選ぶ
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プロダクトアウトとマーケットインでは、ニーズをベースとしているためマーケットインの方が当然に売れやすいといえますが、こと海外販路開拓になると日本で売れている製品を売るのがセオリーともいえます。ここは現地ニーズ視点でのローカライズとのバランスが難しいところでもありますが、ひとつのポイントとして、国内の販売実績も当然に現地バイヤーは意思決定の判断材料として重要視するからです。そのため、自社優位性が高く国内販売実績のあるプロダクトが先に決まったうえで、マーケットを探すというアプローチになります。そこにローカライズの素地を残しておくという視点が重要です。では具体的にどのように製品の絞り込みを進めていけばいいか確認していきましょう。
推奨アプローチ:
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アプローチは至ってシンプルです。
(1) 国内で販売数量の多い自社製品(カテゴリ含む)を抽出する。
基本的に国内で売れないものは海外でも売れません。時折、海外は文化も商慣習も事業環境も異なるため、日本で売れないものが海外でも売れると仰る方もいらっしゃいますが多くは希望的観測に過ぎません。実際に売れるケースはあると思いますが、合理的に進めるうえで売れていないものを海外では売れそうだからと初期仮説構築の段階で掲げることは得策ではないでしょう。
(2) その内、自社優位性が高い製品群を抽出する。
販売数量の多い製品または製品カテゴリ群を抽出したら、その中で同業他社と比べて自社の方が競争力が高いと考えられる製品を序列化します。「競争力」をどのように評価すべきかという問いに関しては、国内顧客が(現時点では国内のみしか顧客がいない段階のため)求めている要件をリスト化して各製品または製品カテゴリ群ごとに個別に評価していきます。
そこそこ売れていても競争力があまりない製品は、結果的に海外で販売する際に遅かれ早かれ他社に取られてしまうことが目に見えている故のアプローチです。また、海外に製品を販売するためには知的財産権への対策や規制・認証等の対策も抜かりない対応が必要になるためコストも嵩みます。すでに他社の方がかなり優れているといった製品に関しては無駄な時間やコストをかけないようにしたいものです。
(3) その内、国内でも実際に売り易いとされる製品群を抽出する。
基本的には(2)までで問題ありませんが、更にプラスアルファで考慮したい点として(3)があります。最終的な購入者であるエンドユーザーに対して直接販売せずに代理店等を経由させる場合には、彼らにとって手離れの良さ等の商品の売り易さもひとつのポイントになります。国内で代理店を起用している場合などは、彼らにヒアリングをしてそれらの意見を引き出しましょう。
いかがでしたでしょうか。まずは簡単なポイントから押さえていくことで少しずつ全体像を押さえていきましょう。ローマは一日にして成らずです。