今、目の前に2社いるとします。両社とも海外営業で結果を出したいと切実です。1社は「ウチの製品は他社にはない」と言い切り、顧客分析をしないで海外マーケティング、あるいは海外営業に踏み切ります。もう1社は、先ずは異国の顧客像が一体どのようなものかを浮き彫りにしてからアプローチを考えることにしました。さて、どちらが成功確率が高いでしょうか。普通に考えれば後者になると思います。但し、同じように後者を選んだとしても、どのように現地顧客増を浮き彫りにするのか、その手法や精度によって当然に現地商談における成約率も大きく異なります。今回は、顧客を浮き彫りにする際に、欧米企業が行う手法をご紹介します。
海外販路開拓にも使える手法、カスタマージャーニーって何?
日本でもだいぶ浸透してきたカスタマージャーニーという欧米発のマーケティング手法があります。端的に言うと、目的は顧客を理解し、自社の施策に反映することです。その際の着眼点は顧客がどのようにして購買プロセスを辿るのかになります。自社製品の視点で考えると、顧客が自社の製品を知る前から、知ってからに至るフェーズの中で、顧客はどのように行動を取るのかを時系列に理解するという考え方です。カスタマーは顧客、ジャーニーは旅ですね。直訳すると「顧客の旅」です。それを物を購入する流れになぞられたものと考えればわかり易いのではないでしょうか。ここでのポイントは、その他様々なツールやフレームワーク同様に、ただ当てはめただけでは意味が殆どないということです。ゴールが見えていないと、終わっても「へー・・・で?」で終わります。カスタマージャーニーから効果的なアプローチができるインサイトを見出すことが大事です。
カスタマージャーニーの構成
さて、それではどのようにしてカスタマージャーニーを作成していけばよいでしょうか。カスタマージャーニーの構成は基本的には2軸になります。横軸は時系列で顧客の購買プロセスを記載します。ここは抽象度が高くても構いません。例えば、課題認識⇒リサーチ⇒比較検討⇒購買⇒メンテナンス(アフター)でも良いですし、有名なAIDAMAモデル(注目⇒関心⇒欲求⇒記憶⇒行動)でもよいです。あるいはより現代の購買プロセスを反映するAISASモデル(注目⇒関心⇒サーチ⇒購買⇒シェア)でもよいでしょう。例えばGoogleの場合は認知⇒検討⇒決意・意思⇒購買といった横軸を使用することもあります。大事なことは自分たちに合ったわかり易い形で戦略を具体化できるのであればどのような切り方でも問題ありません。
次に縦軸ですが、こちらも多様です。但し、押さえたおきたい項目としては、顧客の各縦軸のフェーズにおける「顧客の目的」と「具体的な行動」と彼ら「顧客との接点(顧客とのタッチポイントと言ったりもします)」にどのようなものがあるのか、その時の彼らの「思考」はどのようなものであるのか、それらが整理されると、自社で取り組むべき方向性や戦略の枠組みが明確になっていきます。他にもBtoCであれば「感情」もありますし、より詳細行動プロセスをフローチャート化するケースもあります。しかし、どのような形であれルールや過去の事例に囚われずに、ざっくりそのあたりの視点でみればいいのね、と理解をしたら後は自由に行うことを推奨します。間違っても本末転倒なツールオタクにならないようにご注意ください。
実際の欧米の事例
それでは最後に具体的にイメージできるように私の好きな欧米企業のカスタマージャーニーマップをご紹介します。こちらを紹介するのは端的にわかり易いことと、作業が楽しいと感じてもらえるようなカチカチし過ぎていないからです。普段はモノを作る側の企業が海外の顧客の立場になって物事をあれこれ考えるのは脳も体も疲れる作業です。客観性を保つためにインタビューや定量的な外部データを収集して構築することが大切ではありますが、難しい局面もあります。そのため社内でブレストしながら仮説を膨らませて楽しくイラストチックに作成するのも良いと思い、こちらをご紹介させて頂きました。
さて、いかがでしたでしょうか。皆さんも自社独自のカスタマージャーニーマップを作成して自社の固有の海外販路開拓戦略を構想されてはいかがでしょうか。